★素晴らしき頂き物★
★鳴神左翼さんから頂きました★
  STEREO TOKYO (カイ&クリフ)

昼ご飯には少し遅いだろうと言えるような時間帯。
カイは桟橋の先に立ち、1通の手紙を読んでいた。
全てに目を通し、確認するかのようにもう一度最初から読みはじめる。
そして便せんを封筒に戻し小さくため息をつくと、封筒ごと手紙を真っ二つに破いた。
「…何で破いちゃうの?」
いつからいたのか、カイの後ろから声をかけるクリフ。
カイはさほど驚いた様子もなく、ゆっくりと振り向いた。
「いるならいるって言えよ」
「気づいてると思ってたんだ」
「そうか、気づいてなくて悪かったな」
「何イライラしてんの?」
「してねぇ」
海の家に戻ろうと歩きだすカイと、それを追いかけるクリフ。
クリフがカイの足についてこれていないのはカイもわかっているはずなのに、歩くスピードをゆるめようとはしない。
「カイくん、何か変だよ?」
「うるさいっつってんだろ!」
言葉の勢いにまかせ、のばされたクリフの手をはらいのける。
「…あ」
「……」
カイは手に残る感触で、やっと自分がしたことに気づいたようだった。
「…あ、えっと、ごめんね」
クリフは少し寂しそうな表情をしたが、すぐにいつもの笑顔を浮かべた。
それは誰が見ても明らかなほど強がっていた。
違う。違うよ。何でお前が謝るんだよ。
そう言おうとした時にはもうクリフはいなくて。
海にひとり残されたカイは、捨てるタイミングを逃した手紙を握りしめた。
カイはぼんやりと海の家に戻ると、手の中の手紙をコンロにくべた。
ぱちぱちと軽い音をたて、手紙はすぐにただの黒い塊に変わる。

燃えてしまえばいいんだ。
嫌なもの全て。

ちょっとムカつくことがあったからって、心配してくれたやつに八つ当たりかよ。
…まんまガキじゃねぇか。

いっそ、こんな自分も燃えてなくなってしまえばいい。


次の日、クリフは海の家に行かなかった。
カイが海の家を営業している日は、行かなかった日などなかったというのに。
「カーターさん…僕どうしたらいいかな?」
「あなたが思っているほど、ことは深刻ではありませんよ」
「…ホントに?」
「いえ、私は何も事情を知らないのですが」
「…カーターさんっていつもそうだね」
クリフはそれだけ言って教会を出ていった。
「何も事情を聞かされずに『どうしたらいいんですか』と言われるばかりの私の身にもなってくださいよ」
カーターさんのつぶやきは、どうやらクリフには届かなかったようだ。

昨日とほぼ同じ時間、クリフは海の家に顔を出した。
「カイくん…いる?」
「いるよ。入ってこいよ」
少しけだるげなカイの声。
いつものカイの声。
「あの、昨日はごめ」
「わり! 昨日はホントごめんな!」
クリフの言葉をさえぎるように、拝むような仕草で謝るカイ。
「ちょっと嫌なことがあってさ。ホント悪かったよ」
カイはそう言うと、3色アイスをクリフの前に出した。
「何これ?」
「試作品だよ。お前に一番に食べてほしかったんだ。教会に持っていこうと思ってたんだけどな、来てくれたからちょうどよかったよ」
きらきら光るアイスと、少し照れたようなカイ。
あの手紙が何だったのかは、話してくれるまでは聞かないでおこう。
「いただきまーす」


   終わり。














▼ 管理人の一言

青春してるなぁ、みんな!!(何)
そしてカイとクリフはとことん仲良しだなぁ(笑)
そしてカーターさんは大変だなぁ。
「どうしたらいいんですか」と訊きたいのはカーターさんの方だろう(笑)
あ〜、俺もアイス食いてぇ〜!!(落ち着け)
素敵な二人を御馳走さまですv(笑)