★素晴らしき頂き物★
★鳴神左翼さんから頂きました★
  platonic love (ドクター×エリィに見せかけて本当はドク主♂?)

まただ。
ドクターは無意識のうちに、隣の部屋、つまり病院の受付から聞こえてくる話し声に耳を傾けていた。
話が盛り上がっているのか、時折笑い声が交じる。
声はふたつだった。
ひとつはもちろんエリィ、ここで受付をしているのだから当たり前だ。
そして、もうひとつは。
「へぇ、アツキさんも大変なのね」
「大変な分、すごくやりがいがあるよ」
「わかるわ。私も、この仕事にやりがいを感じてるもの」
新米牧場主、アツキ。
いや、もう新米とは言えないだろう。アツキがミネラルタウンに来てから、もうすぐ1年がたとうとしている。牧場の仕事や町にも、最初に比べればずいぶんなじんでいた。

「…ふぅ」
ドクターは小さくため息をつき立ち上がった。
そのままずかずかと受付まで歩いていく。
「先生? どう」
「これ」
アツキとエリィの間に割り込むように入ると、エリィの言葉も終わらないうちにカウンターに何かを置いた。
大量の薬。
「これ、整理して棚に並べておいてくれるかな」
「えっ? あ、はい!」
エリィがてきぱきと作業しているのをしばらく眺めると、ドクターはアツキの方に振り返った。
「君も、特に用がないなら帰りなさい」
「ほらこれ、ケガしてる」
すねたような口調でそう言って、すりむいて赤くなっているてのひらを見せるアツキ。
ドクターはどこからか消毒液を取り出すと、素早く消毒した。
「はい、おしまい。お大事に」
まだ何か言いたそうなアツキだったが、素直に病院を出ていった。


それからしばらくたった、ある日の教会。
いつもと変わらずのほほんと笑っているカーターと、うなだれているドクターの姿があった。
「…何をそんなに悩んでいるんです?」
カーターの声は、ただひたすら温和だった。
「何をしているのか、わからなくて」
「と言うと?」
「何をしているのかっていうより…自分がわからないんです」
「ほぅ」
「…何なんだろう」
「何なんでしょうね」
「…まじめに聞いてます?」
「当たり前じゃないですか」
しれっと答えるカーターを見て、この人に相談するんじゃなかったかな、と思うドクターだった。


教会を出たところで、ばったりアツキに会った。
「…あ」
2人の声が重なる。
「…やぁ」
「…どーも」
そのままさっさと立ち去ればよかったものを、タイミングをはずしてしまった。
それはアツキも同じらしく、それから何を言えばいいのか考え込んでいる様子だ。
「…じゃ、また」
ドクターの横を通り抜け、そのまま歩いていこうとするアツキ。
「おい!」
ドクターは勢いよく振り向くと、アツキの肩をつかんで無理矢理自分の方を向かせた。
急に肩をつかまれよろけるアツキ。体の代わりに視線がぶつかる。
当のアツキも、どんな言葉をどう返したらいいのかわからないらしい。困ったような顔でドクターをじっと見つめている。

「オレは…っ!」
そこまで言って、ドクターは口をつぐんだ。
アツキから目をそらし、肩をつかむ手も離す。
「…何でもない。すまなかった、忘れてくれ」
「…うん」
1度だけ目を合わせると、今度は2人とも歩きだした。
歩きながら、ドクターはひとりつぶやいた。
「オレは…何を言おうとしたんだ?」


   終わり。














▼ 管理人の一言

これまた記念すべき「ドク主物語」の一発目!!(笑)
ここからこの二人は色々と発展して…(何)

実はこれは健全サイトのほうで書いて貰ったので「ドクター×エリィ」っぽくなってますが、
これの「思いっきりドク主バージョン」が、左翼さんの牧物女性向けサイト『スカルシンドローム』にあるので読みたい方は即行でお邪魔しましょう。
そこに行けばこの後の二人がどうなったかも読めます。
このシリーズ好きですv(笑)