★素晴らしき頂き物★
★鳴神左翼さんから頂きました★
  きまぐれな風向き (カーターさん&主人公♂)

しとしとと雨が降る夜。こういう日は、そんなつもりがなくても感傷的になるものだ。
カーターは、なんとはなしにステンドグラスを見上げながら物思いにふけっていた。
この町は平和だな、とつくづく思う。
カーターがミネラルタウンに来る前に何をしていたのか、それを知る者はいない。
カーターがこれからどう生きていくのか、それを知る者ももちろんいない。
ふぅ、と聞いている方まで陰欝な気分になるほど深いため息をついた。教会にはカーターしかいないので、誰かに気を遣う必要などもない。
目を閉じ、気分が沈んでいくのに身をまかせた。
ぼんやりと、ミネラルタウンの前に住んでいた町に思いをはせる。

いろいろあった。本当にいろいろ。
それを誰かに聞いてほしい気もするし、このままずっと自分の胸の中だけにしまっておきたい気もする。
そう、もし誰かに話すとすれば。
…誰がいいだろうか?


「…あの、カーターさん?」
目を開けると、新米牧場主のアツキが心配そうに見ていた。
「はい、何ですか?」
「あっ、寝てるのかと思って、こんな所で寝たら風邪ひきますよって言おうかと…。すいません」
「ありがとうございます。アツキさんは優しいんですね」
沈んでいた気分が少しずつ浮上していくのを感じた。
「アツキさん、少しお願いがあるのですがいいですか?」
「何ですか?」
「しばらくここにいてほしいんです。あなたの話が聞きたい」
「俺の話? えーっと…」
困ったような表情でうなるアツキ。
「牧場のことや、あなたが以前住んでいた町のこと。何でもいいんです」
「早い話が、話し相手になればいいんですね?」
「まぁそういうことですね」
言って苦笑するカーター。
「それから、もうひとついいですか?」
「はい、どうぞ」
「これは少し先の話なんですけどね。私の話を聞いてもらいたいんです」
「今じゃダメなんですか?」
「はい、今は無理です」
アツキは少し思案していたが、やがてにっこりと笑った。
「俺でいいんなら、いくらでも聞きますよ」

アツキとの雑談はそれなりに楽しかった。

この町でなら、たくさんのものを背負っていても重くはなさそうだ。
雨はいつの間にか止んでいた。


   終わり。












▼ 管理人の一言

記念すべき初リク小説は、もちろん我らがカーターさん!!(笑)
田舎の神父・カーターさんには絶対「裏」か、「何かしらの過去」があると期待して(?)いるのは左翼さんだけじゃないっス!!(おい)
でもこの頃ってどこの牧物サイトもカーターさんの小説なんて全然なくって、てっきりカーターさんはかなりのマイナーキャラなのかと思いつつリクしましたよ。
その後カーターさんはうちのアンケートで見事一位になったり同盟が出来たりとすごい快進撃(笑)
やはりカーターさんはマイナーじゃなかった!!

ちなみにこれのどこが女性向けかというと、わざわざ主人公が「しとしとと雨が降る夜」にカーターさんに会いに来たというところです。
「夜」ですよ!(何)しかもその後、雨が止むまで教会で二人っきりで雑談を…!!(だから何だ)
「全国牧場組合」は健全サイトなのにこんな「こっそり女性向け」な作品を書いてもらっちゃいました。
本当にありがとうございます!!